練習本レビュー:ENDURE 限界は何が決めるのか?

トレーニング理論

海外Ironman・国内4大ロング全完走の管理人がお届けします

少し前に、「ENDURE 限界は何が決めるのか?持久系アスリートのための耐久力の科学」を読みました。Endure とは耐えるという意味です。

著者の アレックス・ハッチンソン は、カナダの1500メートルのオリンピック代表候補にまでなり、ケンブリッジ大学で物理学の博士号を取得し、数年間研究者として過ごし、コロンビア大学でジャーナリズムの修士号を取得しました。
理論と実践を兼ね備えた人です。

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限界を決めるのは心か体か?

単純に考えると体が限界を決めているように思えますが、心の方が限界を決めているのではないか
という考えから色々なアプローチ、実験を紹介してます。

ただ、心、つまり脳も体の一部な訳ですから、心と体のどちらかと白黒つけられる話ではない、とこの本でも言ってます。

以下、印象に残った話を抜粋しました。

  • 近代の男子800m走、1マイル走、5000m走、10000m走の世界記録のペース配分を分析したところ、800m走以外では終盤に加速していた
  • 世界中のマラソン参加者900万人以上のタイムを見ると、3時間、4時間、5時間といった大きな時間の区切りではその直前の完走者が多く、その直後は少ない。

残り1kmを切るとペースアップしたり、サブ4のペースランナーに頑張って食らいついたり、もうマラソンランナーあるあるですよね。
確かにここでの耐久力は精神面に関連してそう。

  • ストループ課題 (みどり とか あか 等、文字が表す色とそのフォントの色が異なるモノがどんどん出てきて、その文字の色を答えさせる) を行ってからトレッドミル5km全力走をさせたら、実験群は対象群と比べて、主観的運動強度を高く申告し、6%タイムが遅くなった
  • 自転車の一流プロ選手とアマチュア選手にストループ課題を受けさせてから 20分のタイムトライアルを行ったら、アマチュアはパワーが4.4%低下したが、プロは全く低下しなかった

これも何となく体感で理解できる話。
脳から体を動かすよう司令を出す訳ですから、その司令塔が疲労してたら体にも影響が出そうです。
ただし、プロは影響がなかったと。

  • 単純な認知課題を行い、その間 特別なチューブを通して呼吸する実験を実施。
    ただし周期的にその酸素の量が制限され呼吸がしにくくなる。
    普通の人々は課題の成績が低下したが、海兵隊員と一流のアドベンチャーレーサーはむしろ向上した
  • 研究者が考えるには、まず身体意識が高まることで一流の持久系アスリートは不快感への準備ができており、予想する運動強度と実際とのミスマッチを回避する。
    続いて不快感が訪れた時それに対する自然な反応を抑制する。
    つまり、反応抑制によってさらにがんばり続けることができる

ちょっと身体意識が何を指してるのか分かりませんが(書いてあったかも知れないけど忘れた)、これも過酷なトレーニングをしている人たちはストレスへの耐久度が高い、という話でした。

  • 3月に、スコットランド水泳代表30人、クラブレベルスイマー30人、非アスリート26人に対して、血圧計のカフで腕の血流を遮断した上で、1秒に1回手を開いたり閉じたりさせた。
    どのグループも 40-50回を超えた辺りで痛みが始まるが、音を上げるまでの回数が、代表が132回、クラブレベルが89回、非アスリートが70回だった。
  • この3月の実験を、6月と10月にも水泳代表チームに対して追加実験を実施した。
    競泳シーズンのピークの6月が痛みへの耐性が高く オフシーズン明けの10月が低く 通常のトレーニング期間の3月が中間だった。
  • つまり、痛みへの耐性は後天的に身につけられる

この発想はありませんでした。
でも悪天候でも走ったり暑くてもバイク漕いだりできるのは、体力がついたことで痛みへの耐性が上がっているのかも知れません。

  • 20世紀の前半はサラブレッドの人間も同様のペースで速くなった。
    だが、メジャーな競馬レースの優勝タイムは1950年頃からほぼ同じなのに、同期間のメジャーなマラソン大会の優勝タイムは15%以上も縮んでいる。
  • 一流のアスリートでも「彼ができるなら私もできる」という信念を持つことで真の限界に近づける可能性がある。

これは心理的な壁の話です。
まあ人間の方はシューズの進化が目覚ましいというのも大きい気はします。

目次

この本の目次を載せておきます。

PART1 限界を決めるのは心か体か?

1章:耐久力 – 過酷な1分
2章:体 – 人間機械
3章:心 – セントラル・ガバナー
4章:心- 意識的放棄

PART2 限界に影響するもの

5章:痛み
6章:筋肉
7章:酸素
8章:暑さと熱
9章:のどの渇き
10章:エネルギー

PART3 より限界に近づくための可能性

11章:脳のトレーニング
12章:脳への電気ショック
13章:信じること

オススメ度は高い

結論を出している本ではないので、単純に体力を向上するにはどうしたら良いか、という疑問に答えるものではありません。

それでも耐久力というものを様々なアプローチから研究した話がたくさん載っており、非常に面白かったので、この記事で紹介させていただきました。

興味を持たれたら、是非本を読んでみてください!

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